保健師は、赤ちゃんから高齢者まで地域の人々の健康を守る専門職です。予防医療の重要性が高まる現代において、保健師の需要は年々増加しています。
私は看護実習の際、退院指導から予防医療に興味を持ち、保健師を取得することに決めました。看護師から保健師へのキャリアチェンジを考えている方も多いでしょう。
保健師になって十数年、この選択は間違っていなかったと確信しています。
この記事では、保健師になるための具体的な方法を詳しく解説します。高校生や現役看護師の方が保健師を目指す際に必要な情報をまとめました。
保健師になるには?看護師資格との関係と3つのルート

保健師になるには、看護師免許と保健師免許の両方が必要です。
この章では、保健師と看護師の違いや資格取得のルートを説明します。
保健師と看護師の違いを理解しよう
保健師と看護師は、どちらも人々の健康をサポートする職業です。しかし、仕事内容や働く場所には大きな違いがあります。
看護師の主な仕事 | 保健師の主な仕事 |
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・病院や診療所での診療補助 ・患者さんの療養上の世話 ・医師の指示に基づく医療行為 ・入院患者の日常生活のサポート など | ・地域住民や企業の従業員の健康相談 ・病気の予防を目的とした保健指導 ・健康診断後のフォローアップ ・健康教室や講座の企画・実施 ・メンタルヘルス対策の支援 など |
看護師は「治療」が中心であるのに対し、保健師は「予防」が中心です。
保健師は看護師免許も持っているため、看護師として働くこともできます。
つまり、保健師は看護師の資格にプラスして取得する専門資格なのです。

訪問看護師の時は患者さんの治療や自宅での生活についての看護でしたが、保健師の時は、社会生活の中で病気にならないような関わりにやりがいを感じました。
ちょっとした情報提供や保健指導で生活習慣が変わり、健康状態が良くなった時は本当に嬉しかったです。
保健師になるために必要な2つの国家資格
保健師になるには、2つの国家資格に合格する必要があります。それは「看護師国家試験」と「保健師国家試験」です。
保健師助産師看護師法では次のように定められています。
「保健師になろうとする者は、保健師国家試験及び看護師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない」
つまり、保健師国家試験に合格しても、看護師国家試験に不合格の場合は保健師免許は取得できません。両方の試験に合格することが絶対条件となります。
保健師国家試験は毎年2月上旬に、看護師国家試験は2月中旬に実施されます。試験日が異なるため、同じ年に両方の試験を受験することが可能です。



私は看護師・保健師国家試験を同年にダブル受験しました!
高校生から保健師を目指す最短ルート(4年)
高校卒業後、保健師を目指す最短ルートは4年間です。看護師課程と保健師課程の両方がある4年制大学に入学する方法があります。
- 1〜3年次:看護師になるための基礎・専門科目
- 3〜4年次:保健師になるための専門科目
- 実習:病院実習と保健所・企業などでの実習
4年制大学を卒業すると、看護師と保健師の両方の受験資格が得られます。最終学年で2つの国家試験を同時に受験できるのが大きなメリットです。
ただし、大学によっては保健師課程に人数制限があることもあります。成績上位者のみが保健師課程を選択できる大学もあるため注意が必要です。入学前に募集要項をしっかり確認することをおすすめします。
志望大学を選ぶ際は、必ず保健師課程の有無と選抜条件を確認してください。「保健師課程あり」と書いてあっても、全員が履修できるとは限りません。
オープンキャンパスで先輩学生や教員に直接質問するのが確実です。
私の後輩は、保健師課程に入れず別の養成機関に進学しました。事前の情報収集がとても重要です
看護師免許取得後に保健師を目指すルート(1〜2年)
すでに看護師免許を持っている場合は、最短1年で保健師を目指せます。看護師から保健師になる方法は、保健師養成機関に進学することです。
- 1年制の専門学校や大学専攻科
- 2年制の大学院
看護師として働きながら保健師を目指す人も多くいます。ただし、ほとんどの保健師養成機関は全日制のため、働きながらの通学は困難です。
実習期間も含めて授業への出席が必須となります。休職や退職を検討する必要があるケースも少なくありません。
ですから、職場との相談や計画的な準備が重要になります。



友人は退職して、看護師のアルバイトをしながら学校に通ってました。
中学卒業から保健師を目指す場合(最短6年)
中学卒業後に保健師を目指す場合、最短で6年かかります。5年一貫看護師養成課程校に進学する方法があります。
5年一貫看護師養成課程校とは
・中学卒業後に入学できる看護師養成学校
・5年間で看護師国家試験の受験資格が取得できる
・卒業後は高等学校卒業と同等の学歴となる
5年一貫課程校を卒業後、保健師養成機関に進学し、保健師養成機関で1年間学び、保健師国家試験の受験資格を得ます。
つまり、中学卒業から合計6年で保健師を目指せる計算です。ただし、進学先の保健師養成機関によっては入学条件が異なります。
大学院など一部の養成機関には入学できない場合もあるため注意しましょう。
早くから保健師を目指すのは素晴らしいことです。
ただし、5年一貫校は全国的に数が少なく選択肢が限られます。高校に進学してから看護系大学等を目指す方が、進路の幅は広がります。
じっくり考えて自分に合った道を選んでください。
看護師から保健師になる方法【働きながらでも目指せる?】


現役看護師から保健師を目指す方に向けて、具体的な方法を解説します。
合わせて、仕事と学業の両立や養成機関の選び方についても詳しく説明します。
現役看護師が保健師を目指す際の選択肢
看護師として働きながら保健師を目指す場合、いくつかの選択肢があります。
選択肢1:休職して学業に専念する
メリット | デメリット |
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・授業や実習に集中できる ・確実に資格取得できる可能性が高い | ・収入が減少する ・職場復帰の不安がある |
選択肢2:退職して学業に専念する
メリット | デメリット |
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・時間的な余裕ができる ・職場のストレスが軽減される | ・経済的な負担が大きい ・再就職の必要がある |
選択肢3:勤務形態を調整して両立を図る
メリット | デメリット |
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・収入を維持できる ・現場の経験を継続できる | ・体力的・精神的負担が大きい ・学習時間の確保が困難 |
看護師として働きながら保健師を目指すのは、現実的にはかなり厳しいです。実習期間は日中に現地で学び、夜間に自己学習する必要があります。
フルタイム勤務との両立は体力的にも時間的にも難しいでしょう。職場に相談して勤務形態を調整するか、休職を検討することをおすすめします。
1年制と2年制の養成機関の違い
保健師養成機関には1年制と2年制があります。それぞれの特徴を理解して、自分に合った選択をしましょう。
1年制の養成機関の特徴
1年制の養成機関の特徴 | 2年制の養成機関の特徴 |
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・専門学校や大学の専攻科・別科が該当 ・短期間で集中的に学べる ・授業や実習のスケジュールが詰まっている ・学費が比較的抑えられる ・早く保健師として働き始められる | ・大学院が該当 ・じっくりと深く学べる ・研究活動にも取り組める ・より高度な専門知識が身につく ・学費が1年制より高くなる |
最短で資格取得を目指す人におすすめ | 研究や学問的な深い学びを求める人におすすめ |
看護師から保健師を目指す場合、多くの人が1年制を選択しています。経済的負担や時間的な制約を考慮した選択が重要です。
全日制と通信制はどちらがある?
保健師養成機関には通信制の課程は基本的にありません。保健師資格を通信教育で取得することはできないのが現状です。
通信制がない理由
・保健所や企業での実習が必須である
・直接指導を受けながら学ぶ必要がある
・実践的なスキルの習得が求められる
・高度な専門知識を対面で学ぶことが重要
保健師は地域住民や企業の従業員の健康を守る専門職です。保健指導の実践や地域保健活動の計画・実施など、現場での学びが不可欠。
通信教育では実習を十分に行えず、資格取得の条件を満たせません。そのため、保健師を目指すには学校に通う必要があります。
現在、保健師養成機関はすべて全日制となっています。
看護師として働きながら保健師を目指す場合は、その点を理解しておきましょう。
よくある誤解
「夜間コースはありますか?」という質問をよく受けます。
残念ながら、保健師養成機関に夜間コースはほとんど存在しません。実習が昼間に行われるため、夜間だけの学習では資格取得できないのです。
看護師経験は保健師試験に有利になる?
看護師としての経験は、保健師試験や実習で役立つことがあります。ただし、試験の合格に直接的に有利になるわけではありません。
- 医療知識の基礎が身についている
- 患者さんとのコミュニケーション経験がある
- 健康管理や疾病予防の重要性を理解している
- 実習で看護の視点を活かせる
保健師試験は公衆衛生看護学、疫学、保健統計などが出題されます。これらは看護師国家試験とは異なる専門分野です。
看護師経験があっても、保健師試験のための新たな学習が必要です。実習では看護師としての経験が活きることもあります。
対象者とのコミュニケーションや健康アセスメントのスキルは役立つでしょう。しかし、試験対策としては看護師も未経験者も同じように準備が必要です。
保健師養成機関の選び方【5種類の学校を徹底比較】


保健師を目指すには、適切な教育機関を選ぶことが重要です。
この章では、5種類の養成機関の特徴を詳しく比較します。
4年制大学(保健師課程あり)
4年制大学で看護師課程と保健師課程の両方を学ぶ方法があります。
高校卒業後に入学し、4年間で両方の資格取得を目指せます。
4年制大学の特徴
4年制大学 | |
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特徴 | ・看護師と保健師の両方を4年間で学べる ・最終学年で2つの国家試験を受験できる ・充実した教養教育も受けられる ・研究的な学びも経験できる ・就職活動の支援が手厚い |
学費の目安 | ・国公立大学:約240万円(4年間合計) ・私立大学:約500〜650万円(4年間合計) |



国公立大学の方が学費は安いけど、入学試験の難易度は高い!
- 保健師課程に選抜制度がある大学もある
- 成績上位者のみが保健師課程を履修できる場合がある
- 入学前に保健師課程の定員や条件を確認すべき
4年制大学は、高校生から保健師を目指す最短ルートです。
じっくり学びながら確実に資格取得を目指したい人におすすめします。
保健師養成所・専門学校(1年制)
看護師免許を持っている人向けの1年制専門学校があります。
最短1年で保健師国家試験の受験資格が得られます。
1年制専門学校 | |
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特徴 | ・看護師免許取得者が対象 ・1年間の集中的なカリキュラム ・実践的な内容に特化している ・授業や実習のスケジュールが密集している ・学費が比較的抑えられる |
学費の目安 | ・国公立:約50万〜100万円 ・私立:約150万〜250万円 |
1年間という短期間のため、授業も実習も詰め込まれています。体力的にも精神的にもハードなスケジュールになります。
- できるだけ早く保健師資格を取得したい
- 経済的負担を最小限に抑えたい
- 集中的に学ぶことが得意
早く社会に出たい人や、看護師から保健師へのキャリアチェンジを考えている人に人気です。短期間で資格取得を目指せるのが最大のメリットです。
大学専攻科・別科(1年制)
大学の専攻科や別科も、1年間で保健師を目指せる養成機関です。専門学校と同様に看護師免許保持者が対象となります。
大学専攻科・別科 | |
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特徴 | ・大学が設置している1年制の課程 ・大学の教育資源を活用できる ・研究的な要素も含まれる ・専門学校より学術的な雰囲気 ・大学卒業者が入学条件の場合が多い |
学費の目安 | ・国公立:約50万〜80万円 ・私立:約100万〜125万 |
専門学校よりやや学術的で、大学の雰囲気を感じられます。大学の図書館や研究設備を利用できるのもメリットです。
- 大学を卒業した者
- 指定の専修学校を修了した者
短大や専門学校卒業者は入学できない場合があります。希望する学校が、自分の学歴が入学条件を満たしているか確認しましょう。
短大専攻科(1年制)
短期大学の専攻科も1年制の保健師養成機関です。
短大卒業者が主な対象となります。
短大専攻科 | |
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特徴 | ・短期大学に設置されている ・1年間で保健師を目指せる ・短大卒業者が入学しやすい ・アットホームな雰囲気 ・少人数制の教育が多い |
学費の目安 | ・約110万〜170万円 |
短大専攻科は数が少なく、選択肢が限られます。地域によっては通える範囲に短大専攻科がない場合もあります。
- 短期大学を卒業した者
- 同等以上の学力があると認められた者
短大卒業後にさらに学びを深めたい人に適しています。短大の雰囲気が好きだった人には馴染みやすい環境でしょう。
大学院(2年制)
大学院の修士課程で保健師を目指す方法もあります。
2年間かけてじっくり学べるのが特徴です。
大学院 | |
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特徴 | ・2年間で保健師を目指せる ・研究活動が中心となる ・高度な専門知識を深く学べる ・修士号が取得できる ・将来的に教育・研究職を目指せる |
学費の目安 | ・国公立:約140万円 ・私立:約250万〜350万円 |
2年制のため、1年制より学費は高くなります。ただし、より深い学びや研究ができるメリットがあります。
- 研究や学問に興味がある
- 将来的に教育職を目指している
- 時間をかけてじっくり学びたい
- 修士号を取得したい
保健師としてだけでなく、研究者や教育者を目指す人におすすめです。学術的な興味が強い人には大学院が適しています。
高校生・看護師それぞれに最適な選び方
高校生と看護師では、最適な養成機関が異なります。
それぞれの状況に応じた選び方を紹介します。
高校生におすすめの選び方 | 看護師におすすめの選び方 |
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・4年制大学(保健師課程あり)を第一選択に ・最短4年で両方の資格を目指せる ・充実した大学生活を送れる ・経済的に余裕があれば私立も検討 ・学費を抑えたいなら国公立を目指す | ・1年制の専門学校や大学専攻科が現実的 ・最短1年で保健師資格を取得できる ・経済的負担を最小限に抑えられる ・働きながらは困難なため休職・退職を検討 ・研究志向があれば2年制大学院も選択 |
- 通学可能な距離にあるか
(通学時間が長いと疲れる、勉強時間が少なくなることもある) - 学費が予算内に収まるか
- 入学条件を満たしているか
- 自分の学びたい内容に合っているか
- 卒業後の進路サポートがあるか
養成機関の選択は、将来のキャリアに大きく影響します。複数の学校を比較検討して、自分に最適な選択をしましょう。
オープンキャンパスや学校説明会に参加するのもおすすめです。



私からのアドバイス
学校選びで最も重要なのは「自分の目で確かめる」こと!
私はオープンキャンパスには参加しませんでした。当時の私の条件に合う学校が1つだけだったので、パンフレットと願書だけ取り寄せました。
結果は私に合っていたので良かったのですが、複数のオープンキャンパスに参加できればと後悔もあります。
先輩学生の雰囲気や先生の人柄、実習先の病院について直接質問できる機会は貴重です。
時間をかけてでも、必ず複数の学校を比較してください♪
次に読むべき記事:保健師国家試験と学費について


ここまでで、保健師になるためのルートや養成機関について理解できたと思います。
次に気になるのは「国家試験の難易度」と「実際にかかる費用」ではないでしょうか。
こんな疑問はありませんか?
- 保健師国家試験はどのくらい難しいの?
- どんな勉強をすれば合格できる?
- 実際に学費はいくらかかるの?
- 奨学金は使える?
- 看護師として働きながら学費を貯める方法は?
これらの疑問には、次の記事で詳しく解説しています。
私が実際に行った勉強法や、かかった費用も包み隠さずお伝えします。
保健師の仕事内容や年収が気になる方へ


「保健師になったらどんな仕事をするの?」 「看護師と比べて年収はどう変わる?」 「どの働き方が自分に合っている?」
保健師には行政・産業・学校・病院の4つの働き方があります。それぞれ仕事内容も年収も大きく異なります。
私の実際の1日のスケジュールや、保健師になって良かったこと・大変だったことも紹介しています。
看護師から保健師へのキャリアチェンジを考えている方は、ぜひこちらもお読みください。
→ 【関連記事】保健師の4つの働き方と年収を比較【看護師からのキャリアチェンジ完全ガイド】近日公開
まとめ
保健師になるには、看護師免許と保健師免許の両方が必要です。
高校生から目指す場合は最短4年、看護師から目指す場合は最短1年かかります。
- 保健師は予防医療の専門職で看護師とは仕事内容が異なる
- 保健師になるには2つの国家試験に合格する必要がある
- 高校生は4年制大学の保健師課程がある大学が最短ルート
- 看護師からは1年制の養成機関で最短1年で目指せる
- 通信制の保健師養成機関は存在しない
- 働きながらの取得は困難で休職・退職を検討する必要がある
- 養成機関は5種類あり、それぞれ特徴が異なる
保健師を目指すと決めたら、まずは養成機関の情報収集から始めましょう。オープンキャンパスや説明会に参加して、自分の目で確かめることが大切です。
私も最初は不安でいっぱいでしたが、一歩踏み出してみて本当に良かったです。
保健師は人々の健康を守る、やりがいのある素晴らしい仕事です。あなたも保健師として、予防医療の最前線で活躍しませんか。
この記事が、あなたの保健師への第一歩となることを願っています。


- 産業保健師・看護師歴15年以上
- 現在、フリーランスとして活動中
- Notion好き
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